おしごと見本市:リケジョ編 @芸工展(根津) 開催されました!

10月16日、おしごと見本市:リケジョ編が開催されました。
谷根千で実施されている芸工展とのコラボ企画ということで、エンパブリックの根津スタジオでの開催です。

メーカー勤務の方、学生さん、塾講師さんなどなど、たくさんの方にお集まりいただき、また、ご見学の方も加わり、なかなか活気溢れる会となりました。

今回は、おしごと見本市ということで、スピーカーの方に自分のお仕事やご研究を発表していただいた後、参加者みんなでディスカッションするというスタイルでした。

まず、最初に各人で自己紹介がてら「リケジョだなと感じるとき」を発表していただきました! 氷がグラスでとけるといった日常の自然現象を科学的事象として考えるとか、お料理する時にメスシリンダーを使い、やたら正確に調味料を計るとか、製品の後ろにある原材料をみると化学記号が思い浮かぶなどなど、かなり理系的な内容で、なんというかそのマニアックさを楽しむ仲間ということで共感が高く、ぐっとみんなのテンションがアップしました。

続いて、ゲストの方より、おしごとや研究についてご発表いただきました。


まず、最初は、大学院で前立腺がんの薬の研究をされている博士課程のYさんです。Yさんはとにかく実験好きで、中学や高校時代、理科の実験でグループでやる実験を「全部自分でやりたい!」という思いから、理系に進まれ、薬学部に進まれました。また、大の「ベンゼン環好き!」を自称されており(おーリケジョだ(笑))、有機化学が好きということもあったそうです。ただ、進まれた薬学部は薬剤師の試験に合格することに注力されていたため、好きな実験が十分できず、もっと実験をしたいというお気持ちから、別の大学の大学院へ入られたそうです。


Yさん曰く、化学の魅力は「それまで宇宙のどこもなかった化合物を、自分の手で創り出すことができる唯一の科学分野」ということだそうです。確かに、生物学や物理学などは、自然の謎に迫るということが主な命題のような気がしますが、化学の新たな視点を教えていただき、なにか新鮮な気がしました。

薬の研究としては、製薬会社で研究するということと、アカデミックで研究するということがありいますが、Yさんは、製薬会社で研究した成果というものについて、素材となるものの探索研究から始まり実際に世の中に薬として出回ることだとお考えで、それには30年以上かかったり、また、その確率が1万分の1と低いのですが、アカデミックの場合には、新たな知見を見つけること自体でゴールといえるため、成果が実感できるということが違いではないかとされています。また、製薬会社では利益を出せないような、例えば、患者数が少ないような病気に対する薬の研究もアカデミックならできるというメリットもあるとお話してくださいました。


さらに、ドクターの生活についても教えていただきました。ドクターに進むような方は、とにかく実験=趣味くらいの感覚なんだそうです。修士とドクターではある意味、壁があるように一般的には思われますが、やはりドクターは、自ら新しい提案をすることが求められ、また、指導など準スタッフとして扱われることが多いそうです。また、研究者としては必要な事務作業についても実際に行なうことが多く、やはり責任といったところで、マスターとは大きく違うようです。

今回、Yさんが、発表をお引き受けくださったのは、自分がドクターだというとずいぶん引かれることも多いそうなのですが、普通の女子だということを示したいということだったそうなのですが、う~、ご自身の外見は、チャーミングな普通の女の子だとは思いますが、中身はやはり、ご自身の意思と論理力をもったやはり普通とはいえない方ではないかと思いました!

 

リケジョについては、ご自身の経験上「増えている」との感覚をお持ちだそうです。研究室での女性比率は増えており、また、周りのドクター進学に関してはすべて女性という状況だそうです。

また、ご自身は、東京医科歯科大学の女性研究者のための活動「ANGEL staff事業」へも参加されています。その中で「男性・女性の差を意識する必要はないが、生物学的に違うのは事実。しかしそのことは、比較したりマイナスに捉えたりするのではなく、お互いに補い合っていけばいいこと」といわれているようです。また、研究としてどちらかというと、男性は力で押し切るところが多い(有機化学は体育会系といわれているようです)のではとの感想をお持ちのようです。

 

今後は、アカデミックには残らずに、企業などへの就職をお考えのようです。昨今はドクターの数も増えてポスト獲得もかなり困難であるという状況のため、指導教官もあえて大学に残ることを勧めないそうです。化学系はまだいいそうですが、生物系のポストはかなり少なくさらに難関という状況だそうです。我が国において、ドクターを増やすという動きがある中で、受け皿がないというのは憂うべきことといえるでしょう。

 

 

続いては、大手化粧品メーカーの技術広報として働いてらっしゃるMさんです。広報で働いてらっしゃいますが、もともとは農学部ご出身で、研究所で洗顔料などの開発をされていました。
一方、Mさんは、人とコミュニケーションすることがお好きで、また、科学のおしろさや研究者技術者の魅力を伝えたい、場の創出が好きということから、科学を一般の方へ伝えるということにご興味があったそうです。具体的には、学生時代より御茶の水大学の理科教育支援者養成プログラムや、東大の科学技術インタープリター養成プログラムや、国立科学博物館のサイエンスコミュニケータ養成実践講座などを受けており、さらに、サイエンスカフェの活動もされていました。
会社でも、こうしたバックグランドが認められて、研究開発畑より、広報という部門へ移られたのです。

 

研究開発時代には、自分を実験台として新しい洗顔料の開発をされていたようです。化粧品などの開発は、まずは研究者自らが実験台となり、それがOKとなれば、社内の人にお願いして、さらにOKとなれば、モニターさんに試してもらうというステップを踏んで製品として世の中にでるそうです。ですから、男性研究者でも、ファンデーションの担当になったら、コントローラーとして半分は従来品、半分は新製品などと塗って使用感を確かめたり、マスカラ担当の人は自分のまつげを短くして短いまつげのお客さんの立場で実験したりと、まさに体を張って新しい製品を開発されているそうです。

広報へ移られてからは、つなぐ能力を活かして、製品のお客様向けの説明のし方を研究者や技術者の方へレクチャーしたり、工場見学の一般の方へのご説明などもされているそうです。また、女性研究者向けの助成金の事務局もされており、女性研究者支援にも携わってらっしゃいます。

広報に理系の人が働くことについては、今後、製品をわかりやすく伝える、科学的根拠を持って説明するといったことが必要になる場面が多くなるため、必要性が増すのではないかということです。といっても広報には様々なバックグランドの方がいらっしゃり、みなさんのそれぞれのバックグランドを活かした活動をしているようです。大学においても、各学部で広報には、力を入れています。博士課程修了の方が、大学広報に就任されるということもあり、専門的な知識や理系のセンスを活かしながら広報するといった意味で、ここにも理系の活躍の場が広がりそうです。

 

また、Mさんのお話では、米国などでは、博士課程を修了された方が小学校の先生になったりということもあるそうで、子どもたちの様々な疑問に対応できるということで、日本の理科教育との違いなども教えていただきました。小学校では、専任の理科教員がいないことより、「虫が嫌いな先生のための理科の教え方教室」などが開催されたりするのが実情のようで、これは現場の教員云々というより、学校のシステムの問題といえるかもしれません。

 

塾講師をされている方から「子どもたちに何のためにこの勉強をするのかといった質問をよく受けるのだが、どのようにお考えか?」といった質問が挙がりました。海外では、単元なども総合的で、一つ一つのことが自分の生活に実はつながっていることを示すような教え方が多いそうです。日本のように単発で教えると、そのものの意味が見出せない状態なのかもしれません。なかなか、現場の方に、すべてのことについて生活とのつながりを見せながらというのは難しいかもしれませんが、一つでも何かそのようなものを示すことにより、子どもたちの勉強の意義のようなものを伝えることができるのではないでしょうか。

 

最後に事務局Yより、シンクタンクの仕事とメーカーの技術職について、お話させていただきました。
シンクタンク業務(コンサルティグ業務)は、あまり馴染みのないものではありますが、実は理系の方が多く活躍しており、それは専門性というよりは、理系の論理力や探求力、対応力が重宝がられているのではないかということをプレゼンさせていただきました。また、メーカー技術職について、ものづくりと言っても会社に利益をもたすべきものであること、製品サイクルが短い現在において、様々なジレンマを抱えながら開発していること、また、年齢が上がるについて、マネジメントに注力することが多くなるため、そうした能力も要求されることなどをご説明されていただきました。

 

 

発表の後は、サイコロトークによるディスカッションとなりました。サイコロトークとは、サイコロを振って、それによって決定されたお題について話し合うというトークスタイルです(某番組でもやっていますね~) 

本日のお題としては右の6つを設定させていただきました。

 

その中で、サイコロで選ばれたお題の一つめは、⑥就職先で自分の専門はどれだけ活きるのか?企業とアカデミックの違いは?でした。
一人の方は、就職先が大学の共同研究先だったので、十分に自分の専門が活かせているということで、即戦力として活躍できるためラッキーだと思われているようです。一方、もうお一方もやはり同じように学生時代にやっていた分析を今もお仕事としてもされているそうなのですが、自分としては、大学とは別のことをしたいと思ってらっしゃったそうですが、逆に即戦力として期待されて現職になっているそうです。今は、開発を希望しつつも分析で頑張っているとのことです。分析などはスペシャリストとしてみられてしまうため、専門が活かせる反面、職種がある意味限定されるというデメリットもあるようです。また、ドクターの方も、それは同じで専門を重視されてしまうため、研究テーマによっては企業での採用すら大変だということもあるそうです。逆にテーマが合えば、即採用ということもあるため、専門がメリットなのかデメリットなのかは、わからないということでした。
また、学生さんの中には、あえて自分の専門にこだわらず、自分磨きができればよいというお考えの方もいらっしゃいました。理系にも、マスコミとか出版といった選択肢もあるので、幅広く就職先を考えればいいのではというみなさんからのアドバイスがありました。

第二題めは、④パートナーもやっぱりリケジョブであってもらいたい?でした。Y以外は皆さん未婚ということもあり、理想のパートナー像などのお話もあって、盛り上がりました! 

意外と理系の人と芸術家は合うかもというお話もありました。数学者と音楽家という組み合わせは多いそうすよ。

やはり、話が合うとか理解があるといった意味で、リケダンがいいという意見も多いようでしたが、やはり研究所などや研究室は狭いため、出会いといった意味でもある意味、しかたががないのか?といったお話も出ました。

 

最後に、仕事をする上での「理系の強み」について、ひと言づつお話いただいて閉めとさせていただきました。皆さんのご意見としては、探求する力、いろんなことに興味をもち調べる姿勢、自分で問題を提起してそれを研究して解決する力、PDCAが一人でできる力、理系ならどんな仕事もできるということ、復職にも有利であること、一つの事象に対して単に結果を出すだけでなくその原因や背景までも考えることができる力があることといったことが挙げられました。これからも、リケジョの強みと誇りを持って、皆さんにご活躍いただければと思います!

 

今回は、かなりリケジョ的な会でしたが、皆様から色々な分野の方と交流することもでき、楽しかったという感想をいただきました!

発表していただいたYさん、Mさん、本当にありがとうございました!
ご参加していただいた皆様もありがとうございました。
充実した時間を、共有することができ、事務局Yとしても、ありがたく思っております。
またの機会に、是非、また、お会いしたいです!

 

YさんもMさんも、この日のためにプレゼン資料をバッチリご用意くださいました。プレゼン資料を苦もなく作れ、発表できる! これも、リケジョの強みなんじゃないかと密かに事務局Yは、思いました。

 

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